准教授 高野先生のこと

帰り際、私は用意していた秋ちゃんへのバースデーカードを手渡した。

「律君のお誕生おめでとう、それに、新しい3人家族のお誕生もおめでとう」

「ありがとう。うん、ありがとね」

本日二度目のあつい抱擁。

あれだけ大きかった秋ちゃんのお腹は、もちろん、すっかりぺったんこ。

それは当然のことなのだけど、やっぱり私はとても不思議な感覚を覚えた。


病院を出たところで、真中君は立ち止まり私たちに向き直った。

「じゃあ、ボクはここで」

「よかったら送りましょうか?」

「いえ、この近くで彼女と待ち合わせしてて……大丈夫です、有難うございます」

真中君の彼女は1コ下の経済学部の子で、超キュートな彼女と彼はラブラブなのだ。

「これからクリスマスなんだ。シオリンたちも、今日か明後日だろ?」

「うん。うちも今日にしたよ」

全国の恋人達が盛り上がるのは明日24日の夜であろうに……。

なのに、我々が23日に盛り上がろうというのには列記とした訳があった。

「ひっでぇよなぁ、24日に研究室の忘年会なんてさ。沼尾さんの差し金だぜ?」

「うーん、研究室メンバーの恋愛事情がねぇ、語るに忍びないというか」

そんなわけで、24日のクリスマスイブは、独り者ばかりの忘年会。

私と真中君も、団体行動の重要性と協調性を重んじて出席するわけである。



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