准教授 高野先生のこと
帰り着いた我が家?は、ツリーもリースもない、まったくいつもの我が家。
寛行さんが、ちょっと申し訳なさそうな顔をして私にたずねる。
「やっぱり、ツリーとか飾りたかった?」
「うんん。だって、もみの木とか伐採してくるのは大変だよ?」
「君は、本物志向だなぁ……」
「ツリーはともかく、来年はリースくらいは飾ろうかなって思ってる」
「うん」
「あとね、来年はサンタコスチュームを着てみたい」
「ええーっ!」
「だめなの?」
「あの、ミニスカートのやつでしょ!?」
「うん。帽子もね」
「ぜんぜんダメじゃないよ!今年からやろう!うん、善は急げというからね、うん」
「なんか、積極的すぎて怖い……善って……」
「ハンズに行けばあるかなぁ」
「いや、あの、来年の話だし。あとね、来年も大学のクリスマス礼拝出たいなぁ」
「うん。来年も三人で出ようよ」
「三人?」
「そう、僕らの敬愛する水原先生も。先生さえよければ、ご一緒させてもらおう」
「うん、そうだね」
来年のことを言うと鬼が笑うなんていうけれど、これじゃあもう……。
今頃、鬼ヶ島全土は爆笑の渦に巻き込まれているに違いない。