准教授 高野先生のこと

帰り着いた我が家?は、ツリーもリースもない、まったくいつもの我が家。

寛行さんが、ちょっと申し訳なさそうな顔をして私にたずねる。

「やっぱり、ツリーとか飾りたかった?」

「うんん。だって、もみの木とか伐採してくるのは大変だよ?」

「君は、本物志向だなぁ……」

「ツリーはともかく、来年はリースくらいは飾ろうかなって思ってる」

「うん」

「あとね、来年はサンタコスチュームを着てみたい」

「ええーっ!」

「だめなの?」

「あの、ミニスカートのやつでしょ!?」

「うん。帽子もね」

「ぜんぜんダメじゃないよ!今年からやろう!うん、善は急げというからね、うん」

「なんか、積極的すぎて怖い……善って……」

「ハンズに行けばあるかなぁ」

「いや、あの、来年の話だし。あとね、来年も大学のクリスマス礼拝出たいなぁ」

「うん。来年も三人で出ようよ」

「三人?」

「そう、僕らの敬愛する水原先生も。先生さえよければ、ご一緒させてもらおう」

「うん、そうだね」

来年のことを言うと鬼が笑うなんていうけれど、これじゃあもう……。

今頃、鬼ヶ島全土は爆笑の渦に巻き込まれているに違いない。





< 429 / 462 >

この作品をシェア

pagetop