准教授 高野先生のこと
12月27日は今年最後の土曜日で、私は今年最後のバイトだった。
バイト先である診療所は、明日からが年末年始の休診期間。
ということは、普通に考えれば今日が仕事納めのようだけど、実際は――
納会は“出”のスタッフが多い平日の昨日に終わっていたし。
なんだかまるで、ちょっとしらけた消化試合のようだった。
そんなわけで今日は特には何も無く、私は平常どおり淡々と仕事をこなしていた。
比較的外来の患者さんも少なくて、在宅の患者さんにトラブルもなし。
予定通りにあがれそうで、ほっと密かに安堵する。
今日はバイトが終わったら自宅へは戻らず、そのまま帰省することになっていた。
ほぼ時間通りに仕事を終え、荷物を持って診療所のそばのコンビニへ急ぐ。
入り口近くの雑誌コーナーに料理雑誌を熱心に立ち読みする彼をすぐに見つけた。
「ごめんなさい、お待たせしました」
「ん、お待たせされました」
寛行さんの“お待たせされた”時間が、いかほどなのかは定かでないが。
彼はまったく機嫌よく、イライラもプンプンもしていなかった。