朱鷺
人は、つい、人に、見返りを求める・・・・
薫は飲み屋でバイトを始めた。あいそのいい子だから、そつはない。朱鷺は本当は水商売を薫にしてほしくなかった。でも、薫の働きなしに部屋を維持することができない。昼間働いたら?と言ってみたが、薫はそのたびにはぐらかした。
その日、朱鷺はめずらしく定時の5時に会社を出た。今ならまだ、薫が部屋にいるだろう。出勤前だろうから、一緒に出て久しぶりに飯でも喰って、一緒に店に入ってもいいな。どんな仕事ぶりなのかも見られるな。
アパートの2階への階段を上がる。向こうの突き当たりの部屋。ベルを鳴らす。
「あれ?」
もう一度ベルを鳴らす。パタパタとスリッパの音がして、ドアが開いた。
「あ、朱鷺君おかえり~」
朱鷺は、何か違和感をいだいた。
薫から、お風呂に入り立ての石けんの匂いがする。これから薫は仕事だからめずらしくもないことなのに、なぜか匂いが気になった。しいて言えば、恋するものの勘だろうか。
え~ご飯食べてお店に来てくれるのぉ、嬉しいなぁ~じゃあ、支度するねぇ~、と薫は着替えを始めた。
朱鷺はスーツのまま、違和感という匂いを感じていた。台所にぼんやり立って、なぜか、なぜか、目にとまったゴミ箱の蓋を開けた。
そして、朱鷺のものでも薫のものでもない。煙草の吸い殻をみつけた。
「・・・薫」
薫は飲み屋でバイトを始めた。あいそのいい子だから、そつはない。朱鷺は本当は水商売を薫にしてほしくなかった。でも、薫の働きなしに部屋を維持することができない。昼間働いたら?と言ってみたが、薫はそのたびにはぐらかした。
その日、朱鷺はめずらしく定時の5時に会社を出た。今ならまだ、薫が部屋にいるだろう。出勤前だろうから、一緒に出て久しぶりに飯でも喰って、一緒に店に入ってもいいな。どんな仕事ぶりなのかも見られるな。
アパートの2階への階段を上がる。向こうの突き当たりの部屋。ベルを鳴らす。
「あれ?」
もう一度ベルを鳴らす。パタパタとスリッパの音がして、ドアが開いた。
「あ、朱鷺君おかえり~」
朱鷺は、何か違和感をいだいた。
薫から、お風呂に入り立ての石けんの匂いがする。これから薫は仕事だからめずらしくもないことなのに、なぜか匂いが気になった。しいて言えば、恋するものの勘だろうか。
え~ご飯食べてお店に来てくれるのぉ、嬉しいなぁ~じゃあ、支度するねぇ~、と薫は着替えを始めた。
朱鷺はスーツのまま、違和感という匂いを感じていた。台所にぼんやり立って、なぜか、なぜか、目にとまったゴミ箱の蓋を開けた。
そして、朱鷺のものでも薫のものでもない。煙草の吸い殻をみつけた。
「・・・薫」