朱鷺
ないかーー」
「なんの話し、いつの話し?」
「とぼけるな!もういいよ、出て行けって言ってんだよ!」
「嫌だ、朱鷺君が好きだもん」
「明日、解約してくる、どこへでも行け」
「どこへ行くの!」
「おまえの顔が見たくないんだよ、俺が出て行く」
「待って、嫌だ、行かないで」
「うるさい!!」
「朱鷺君がいなきゃ、死んじゃう」
「黙れ、そんなこと言って、死んだ奴なんかいない!!」
「じゃあ、死んでやる。」
 薫は流しから、包丁をつかんだ。朱鷺は憎々しげに笑った、やれるもんならやってみろ、と思った。だから薫に背を向けた。
「行かないで、って言ってるでしょーーー!」
「もういいよ」
「嫌だ、行かないで、朱鷺君がいなきゃ死んじゃう」
「・・・・・・・」
1歩踏み出した。
「朱鷺君が、見捨てる、嫌だ!!!」
聞こえるはずがない、小さい音なのに、思わず朱鷺は振り返った。聞こえるはずがない包丁の音なのに、振り返った朱鷺の目の前が真っ赤になった。
「薫!!!!」
   


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