西の狼
「……そうか…後は、イレールだが……」
「あの時、イレールさんは確かにドラゴンを突き破って現れましたねぇ………そんなことが可能な種族というと、かなり限られますが………」
「しかも女だからな……レオールは、心当たりはないのか?」
レオールは暫く考え込んでいたが、やがて口を開いた。
「……かなり昔の噂だが、ここから北にあるユーミル山脈に、馬に跨がり、槍を手にして野山を駆ける高等な種族がいるという噂を聞いたことがある。その種族は、総じて高い魔力を備え、その扱いにも長けた種族らしい。そしてその種族には、秘伝の槍術が伝わっているという……」
「……槍と魔法に長けた種族ですか………それは、恐らく『ワルキュリア』でしょうねぇ……」
「ワルキュリア……?」
「私も詳しくは存じませんが、何でも女性だけの種族らしく、誰もワルキュリアの男性を見たことが無いそうです。それに、戦場では槍と魔法と馬を巧みに操って攻め立てる種族として有名だったそうです。最近は、ほとんど姿を見なくなったと聞きましたが……やはり、生きていましたか……」
「魔王は、手を下さなかったのか?」
「えぇ………何故か魔王様はワルキュリアの一族に手を出さなかったそうですねぇ……まぁ、何か理由があったんでしょうがねぇ……」
「……イレールは、その一族の一人ということか……だが、なぜイレールは捨てられたんだ?それだけの一族なら、一族の子供をみすみす捨てるなんてこと…するとは思えないが……」
「……何か、事情があったんスかねぇ……」
「いずれにしても、タダごとでは無いだろうなぁ……本人に聞ければ、一番良いんだが……」