西の狼
「承った。ジブリール殿、手伝ってくれ」
「分かりました」
二人は主人を担いで病院へと向かった。
「………親が子に刃を向けるとはな……ロジャー、しっかり見張ってろよ?」
「どっか行くんスか?」
「……イレールに話すことがある。頼んだぞ」
レオンはイレールを助け起こして奥の調理場に移動した。
未だ泣きじゃくるイレールを何とか座らせると、レオンは反対側の椅子に座った。
「………ご主人に危機が迫った以上、話しておかなければならないことがある。本来なら、ご主人から話すはずなんだろうが………」
「………お願いします……」
何とか冷静さを取り戻したイレールがそう言って答えた。
「………イレール………あなたは、あの二人の本当の子供じゃない……」
「…………………………そう……………ですか………」
レオンの言葉を聞いたイレールは、大して驚いた様子も無く、さも当然の様に聞いていた。
「…………驚かないんだな…やはり気付いていたのか?」
「はい……何となくですけど………お母さんが、言っているのを聞いたんです。『あんな子、拾わなければ良かった』って……それで、あぁ、私はいらない子なんだなぁ………って………」
「………なるほどな……それで納得がいった。領主が、なぜイレールを生け贄として選んだのかが……」
「……誰でも良かったんじゃないんですか?」
「確かに誰でも良かったんだろう。だがそれには多少強引な手を使うことになる。それはあまり効率は良くない。お母さんはそこに付け込んだんだろう……」
「……良く、分からないんですが………」