西の狼
「お母さんは、領主と何らかの取り引きでもしていたんだろう。そして、領主はその対価として……」
「………私を………」
「………そういうことだ。それに、お母さんの態度からしておかしいとは思っていた。娘が無事だったのに、あんな表情をするなんてな……あの男達も、お母さんが雇ったかなんかしたんだろう。そして、あそこで死ぬはずだったんだろう。そこで、俺達が助けたことで予定が狂ってしまった……」
「……そんな………」
イレールはそれっきり両肩を落として俯いてしまった。
「……今は、ゆっくり休んだ方がいい。後は俺達が何とかする………その後で、イレールの本当の両親を探そう」
「……………え……………」
イレールは耳を疑った。
「アテはある。大丈夫だ」
レオンのその言葉を聞いた瞬間、今まで氷の様に冷たかった胸の奥が、暖かくなるのを感じた。
そして、涙が溢れた。
「………はい…ッ!」
レオンは泣きじゃくるイレールを残してロジャーのところに戻った。
「………イレールさんは………」
「………今は、そっとしておいてやれ…」
静かにそう言ったレオンだが、その胸中には激しい怒りが渦巻いていた。
その矛先は、イレールの母親へと向いている。
「……なぜイレールを殺そうとした………」
「……………」
「………答える気は無い、か……」
レオンはいっそ殴りたくなったが、堪えて代わりにアグニを床に突き刺した。
「………イレールが悲しむだろうから、殴ったりはしないでやる。だから言え……なぜイレールを殺そうとした……」