西の狼
「………俄かには信じがたい話だな………」
「ですが、有り得る話ではありますねぇ……ワルキュリアの一族は、自分の親と戦い、打ち倒すことで一人前とする風習があると聞いたことがあります。イレールさんが本当にワルキュリアの一族ならば………」
「………むしろ、当然のことか……なら、早い内に動いた方が良いな。」
「そうですねぇ、今夜にでも発ちましょうか。お母さんは、レオールさんにお任せしますよ」
「そうだな。ご主人のことも見ておこう。母親の方は、自警団で拘束しておく」
「じゃあ、ボク達はどうするッスか?」
「……出発は、今日の深夜0時にしよう。その方が人目につかなくていい。それまでは休んでるとしよう」
「そうッスね。じゃあ、また後で……」
「えぇ、それじゃあ私も少し休むとしますよ。行く時は声をかけて下さいね」
ジブリールは一人で部屋を出て行った。
「………じゃあ、私も母親を詰め所に連れて行こう。何かあれば魔法でも召喚でも使って連絡してくれ」
「あぁ、助かる」
レオールも静かに部屋を出て行った。
それから数時間経ち、太陽が完全に沈んで、月が空高くに上った頃に、レオン達はイレールを連れて宿屋を出た。
当然ながら、辺りに人の気配は無く、静まり返っていた。
「………準備はいいか、イレール?」
「は、ハイッ!」
イレールは慣れない夜中の外出に若干上の空になっている様だ。
四人は事前に借りていた馬に跨がって、一路イレールの本当の家族がいるであろう、ユーミル山脈を目指した。