西の狼


「お呼びでしょうか、長老様……」




「東の結界に異変が生じた。何事があったのか、確認して参れ」




「はっ!」


フォルカスは短く返事をしてまた姿を消した。


「この一族は相変わらずの忠実さだな、長老殿……」



「グレン公よ……貴殿はいつまでこの郷におるのかね?聞いた通り、何者かが侵入してきた様じゃ。こんなことは初めてでのぉ……何が起こるか、私にも分からぬ………」



「………ならば、俺は長老殿の護衛として居させて貰おう。それならば文句もあるまい?」


「……ふぅ……忠告はしたでのぉ。私は、中で休ませて貰おうかのぉ………」


「そうされるが良い。ご老体にはこの時期の山風は堪えるのだろう?」


「…ふん。余計な世話じゃ、若造め…」


長老は笑みを含んでそう言いながら、再び洞窟の中に戻って行った。




残されたグレンは、東の空を見つめている。


「………東の空が哭いている……瞳が近付いているのか…魔王も人が悪いな……我々十騎士にすら何も告げずに動くとは……やはり我々の中に裏切り者がいるのか………」



グレンはまた東の空を一瞥してから、長老の戻った洞窟に戻った。







「……結界を通ってから随分歩いたが、特に何も見当たらんな………」




「もしかして、違うとこに郷があるんじゃないッスかねぇ……?」



「……もしかすると、そうなのかも知れないな………」



レオン達は盟約の瞳が開けた穴を通って結界を抜けて、森の中を歩いていた。




しかし、一時間近く歩いたが、回りには木々ばかりで、郷らしきものは何一つ見当たらなかった。




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