西の狼
「あぁ。ハトホルの街の領主の一件はご存じか?」
「あぁ……あの男も愚かなことをしてくれたものじゃ……おかげで、世界のバランスが崩れる寸前じゃった。まぁ、貴殿等が止めてくれたのじゃがな……で、それが何の関係があると?」
「イレールは、その時領主に取り込まれていた。だが、領主の胸を突き破って自分から出て来たんだ。その時に、槍と鎧の姿で軍馬に跨がっていた」
「……確かに、可能性はあるかの……どれ、一つ見てみるかのぉ………イレール、近くに来なさい」
「え……レ、レオンさん………」
イレールは若干怯えた表情でレオンを見ている。
「行くんだ、イレール」
しかしレオンがそう言うと少し戸惑いつつも長老の側に立った。
「しゃがみなさい」
長老の言う通りにしてイレールは腰を下ろした。
「……少し、『中』を見させて貰うぞ……」
長老はゆっくりと右手をイレールの額に当てた。
「う……あ、ハ………ッ」
イレールは弱々しい呻き声を漏らしているが、意識は無い様だ。
「……フム、これは……?」
その時、突然長老が右手をイレールの額から離した。
それでイレールは倒れてしまったが、丁度後ろにいたグレンが支えた。
「これは………もしや、ブリュンヒルデの………ッ!?」
と、長老が言葉を発した瞬間、イレールの体から光が漏れ始めた。
「な、なんだ……ッ!?」
「この発光は、やはり……ブリュンヒルデの………」
長老がそう呟くのと、イレールの体から光の球が飛び出すのは、同時だった。
「……これは、一体……」
レオンが不意に呟いた一言に反応したのか、光の球はレオンの側に寄ってきた。