西の狼
「何だ、そんなことか…仕方ないだろう。ガラルドは四大貴族の一つ、ブラーニング家の当主なんだ。色々公務もあるだろう。それでも、ガラルドはお前のために少しでも時間を作ろうと必死なんだ。それくらい、察してやれ。」

「…ガリオは、大人なんだ…」

「…当たり前だ…」

その時、ガリオは後ろに気配を感じて目線だけ気配がした方に向けた。

「…ふっ…おい、レオン。お前はいい父親を持ったな。」

「……え……?」

レオンはそう言ったガリオの視線の先に目線を向けた。そこには、ガラルドがいた。

「な、何で…!?」

「あぁ、大した様じゃ無かったんでな。さっさと帰って来たんだ。そしたら、お前がいないっつうからな。全く、心配させやがって…ほれ。」

ガラルドは手を差し出した。

「帰るぞ。まだパーティーは終わってないだろ?」

それを聞いたレオンの顔が弾ける様な笑顔に変わった。

「はい!」

二人と一匹は家まで一緒だった。





「…レオン…!?」

屋敷に着くと玄関の前で一人の女性が待っていた。その女性はレオンの姿を見るなりレオンを思いっ切り抱き締めた。

「あぁ、良かった…心配したわよ…」

「お、お母様…苦しい…」

「あ、あら…ごめんね、レオン。さぁ、中に入りましょう。皆待ってるわ。」

女性はレオンの手を引いて中に入っていった。ガラルドとガリオはゆっくりと中に入った。

「…で、何の話だったんだ?」

ガリオはガラルドに話しかけた。

「あぁ…帝国軍がまた侵攻を始めたらしい。アルバートの飛竜騎士団が迎撃に出た。先に奇襲をかけて一気に殲滅するつもりらしいがな…」

「そうか…帝国は、『あれ』に気付いていると思うか?」

「…分からんな…ここ最近動きが無かった帝国軍が動き出したのも、もしかしたらそれを察知しての侵攻かも知れない。」

「何にせよ、油断は禁物、か…」
< 5 / 182 >

この作品をシェア

pagetop