5年先のラブストーリー-この世のしるし-
「ケイを守りたいんじゃない。何かをしてあげたいんじゃない。俺の人生でケイがいなければ何も始まらないんだ。ケイの全てを受け止める気持ちに嘘はない」
「直君。重いよ、苦しいよ」
「・・・、ケイには消し去る事の出来ない傷かもしれない。けれど事実は事実として受け止めるしかないんだ。俺が必ず拭ってみせる。そうなんだとケイにも必ず分からせてみせる」
そこまで回想した松田の話しは急に止まった。
そんな松田は重苦しい表情になった。
「力強い工藤さんの言葉に恵子さんもきっと安らいだ事でしょう。しかし更なる悲劇が二人に襲いかかったのです。他人のこの私でさえ今度ばかりは神を恨みました。二人をどこまで追い詰めれば気が済むんだと」
健三はもはや返す言葉はなかった。
「妊娠が分かった恵子さんは工藤さんには言えず私の元へ相談に来ました医者である私は当然恵子さんの体を第一に中絶をすすめました」
「・・・」
健三の体は震え出した。
「そして中絶当日、いつものように恵子さんを見舞う為に病室を訪れた工藤さんは病室に恵子さんがいない事をナースステーションで確認し、その事実を知りました」