5年先のラブストーリー-この世のしるし-


健三は全てを知り、直樹に侘びようと決心を固めていた。


しかし、それだけで話しは終わらなかった。



「恵子さんの体で出産とは極めて危険な状態、体の負担を考え全力を尽くしましたが・・・直子ちゃんの脳への障害は避け切れませんでした。

恵子さんの体も精魂尽き果て手の施しようがなかったのも事実です。

それがあれから十年もの歳月が流れた。

医学でも解明不可能な奇蹟。

いや二人の“真実の愛”が神をも二人の人生を見届けたいと唸らせての事だったのでしょう。

しかしそれもここへ来て、
恵子さんの病状は急変し・・・」


松田でさえ、これ以上の言葉はなかなか出て来なかった。


「・・・私に“家族を守るのに何の理由がいる”と、そう言って・・・」


松田は最後の力を振り絞るかのように告げた。


「半年前、恵子さんと同じ血液型の工藤さんから輸血する際、少し気になる点が見つかり精密検査を受けてもらいました。

結果は・・・


若い分、進行も早く全てに転移してしまうまでにと・・・」


健三はこの時、直樹が直子を手放した本当の理由を知った。

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