5年先のラブストーリー-この世のしるし-
「そうです。そしていつか来る・・・」
松田のその言葉に健三の脳裏には針でも突き抜ける鋭い矢が素速く横切った。
「私以外、誰にも告げる事なく1人覚悟を決めていたんです。しかし、オペ当日・・・
そこまでする工藤さんを恵子さんが命を張って止めたのでしょう・・・」
自分の娘の住んでいる場所も知らなかった健三は松田よりいち早く、直樹の自宅住所のメモを受け取り、直子と共に足早に向かった。
直樹は恵子の体を考え空気の澄んだ小さな田舎町に住んでいた。
「どぉーじゃん」
遠くから聞こえる直子の声に、直樹は我が耳を疑う感じで振り向いた。
そしてそこには紛れもない笑顔の直子がいた。
直子は何の迷いもなく直樹の胸に飛び込んだ。
直樹も直子を思いっ切り抱きしめた。
その姿を微笑ましく見ていた健三は直樹に言った