みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
そうかて死人にムチを打つように、亡くならはった一葉を責める気はあらへん。

それに父に言われた「相手を許してやらんと、自分かてずっとツライままでラクにはなれへん。相手を許すことで救われるんは自分自身でもあるちゅうことや」って言葉が、まだ耳に残っとったし。

もしか一葉が生きとったたら、こない素直には許してやらへんかったかもしれへん。

せやけど、今は……。


実際、あのときの賞状かて、ウチがもらうより、一葉がもろうたほうがはるかに有意義やったような気がする。

ウチは賞状を額に入れて毎日見上げるなんてことせぇへんやったと思うし、クルクルに巻いたまんま部屋の片隅に置きっぱなしやったと思うわぁ。


それにズルして描いたとはいえ、実際アノ絵を描いたんは一葉本人なわけやし、その絵の評価として一葉が最優秀賞をもらったことに対してイチャモンをつけるんやさかい、むしろウチのほうがタチが悪いと思う――――



      ×      ×      ×



今から約1年前、中学2年の5月んとき、学校の美術の時間にウチらは辺見先生に引率されて校外の風景の写生に出かけた。
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