みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

そんときウチと一葉は神社の境内にいて、鳥居から少し離れたところに並んで座って写生をしとったんやけど、ウチが神社の全景がほとんど描き上げてしもうた頃、一葉はまだ白いキャンバスに数本の線を引いただけみたいな状態やった。

「美佳はホントに絵がうまかねぇ」

ウチの絵を覗き込みながら、一葉が感心したように言う。

「そ、そ、そないなことあらへんっ」

ウチはびっくりして自分の描いた絵を隠すように、画板を地面と垂直に立てた。

「隠さんでもいいやん」

「むっちゃ恥ずかしいさかい」

「恥ずかしいのはボクのほうや。絵が下手やけん、人に見せられん。あ~ァ、双子に生まれてきたはずやのに、なんでボクは一樹みたいに絵が上手くないとやろ?」

「一葉は自分で思っとるほど下手やないと思うでぇ。ただ各務くんの絵と比較するさかい、自分がアカンと思ってまうだけやて」


確かにそうなんや。クラスの他のみんなと比べれば一葉の絵は上手いほうやと思う。

ただ上には上がいてはるってゆーか、彼女の絵より各務くんやウチの絵のほうがさらに一段上手かったってだけのことや。


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