契約の恋愛
恋人ではないのに、恋人という不安定感。

雪葉は璃雨の友達だし、璃雨が死にたいってことも、契約という馬鹿げた関係のことも絶対言いたくない。
汚い所を雪葉の記憶に残しておきたくない。

それはただ単の璃雨自身の勝手かもしれないけど…。
言わないでいいこともあると、璃雨は信じていた。

優しい秘密はきっとあると。
秘密と嘘はきっと違うと。
「お。」

雪葉の着メロが爽快に鳴り響く。

雪葉は満面の笑みのまま、ケータイを開いた。

…はぁ。

メロンパンを封に残して、お茶を一気に流しこむ。

…どうにでもなれ。

またそんなフレーズが浮かんだ。

でたらめな璃雨にピッタリな言葉。

契約の間はお互いを想い会う、恋人。

それに璃雨は約束した。

あの日、小さな子猫のような紀琉に。

璃雨が死ぬまでの間は、璃雨は紀琉を想い続けると。
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