契約の恋愛
いろんな出来事があった高2の夏が来なければ。

陸飛。

亮也。

雪葉。

今言ったって遅いだろうけど…。

遅いだろうけど…。


放課後。

「よしっ。」
誰もいなくなった教室で、雪葉がやたら張り切ったような声を出す。

昼休みに見せた臆病な表情など、嘘だったかのようなスッキリした顔だった。

彼女の中で何かが吹っ切れたなら、それはそれで安心する。

なんだかんだ言って笑っている雪葉を見るのが、璃雨は好きなんだ。

「じゃあ、アタシはバイト行くから!」

腕時計をしきりに気にしている雪葉は、おそらく時間がギリギリなんだろう。

私は爽快に送りだそうと、満面の笑みを作った。

「うん。分かった。…頑張ってね。」
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