契約の恋愛
冷えた、雨のような恋の始まりだった。

「そ…そんな契約して、どうするんですか…。」

何とか正気を保ち、男の手を振り払う。

そうだよ。動機が分からない。からかってるようにしか思えない。

「からかってませんよ。」

知らないってば。

「一言でいえば、あなたと私が恋人になるという"契約"です。それを結んで下さいと頼んでいるんです。」
恋人って…。

「それって、契約じゃなくて告白なんじゃないんですか。」

「違います。私はあなたのことを好きじゃありません。」

…璃雨も好きじゃないよ。なんなんだよ…。

話がイマイチ噛み合わずに流れていく時間。

死ぬ前にこんな事が起こるなんて予想もしていなかった……。

「あなた、死ぬつもりなんでしょう?」

「!…何で…。」

私の事をしっているといっても、死にたいという思いはずっと私が心に閉じ込めてきた気持ちだった。

見るだけじゃ、到底分からない。

"死神"に会った気分。
けれど、この男は生身だ。間違いなく人間。

それよりも、幽霊とか死神とか非現実的な事を考えてしまう私の方がおかしかった。
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