契約の恋愛
何を言っているんだと口を塞ぎたくなる衝動を押さえて、私はできるだけ淡々とした口調で話した。

真剣に話してしまえば、亮也はかわいそうな孤児で話は終わってしまう。

不幸を背負う孤児は、同情を嫌う。

人から遠慮されたり、可哀想と思われたり、そんな事が大嫌いになる。

璃雨の場合はそうだった。
人から、家族がいないからとか捨て子だからとか、そんな不幸を可哀想だと影で言う奴らは大嫌いだった。
だから、亮也の事も大した問題じゃないわけじゃないけど、なんとなく軽い口調になってしまう。

…何でもないんだよ、と言うように。

「…それからその友達は、精神的にどこかが欠けちゃって寂しいとか苦しいとか、そんな感情に飲み込まれそうになったら、他人を傷つけるようになった。」

初めて、亮也と出会った日。
人を殴った後の亮也。

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