契約の恋愛
"あの人"が死んで以来、璃雨は誰にも本当の気持ちを言わないで生きてきたから。

もちろん、他人の傷に深く関わることもしなかった。
完全に逃げ。

"あの人"が聞いたら、どんな顔をするだろう。

それでも、璃雨は逃げ続けた。

もう何も知りたくなかったから。

人が死ぬ事も、人を失うことも、一人になる事も、捨てられる事もみんなそのちぎれそうな感情を知った。
その代わり、生きる意味を失った。

亮也も、そうなのだろうか。
亮也も、もう何も知りたくなくて衝動にまかせて、心の穴を埋めようとしているのだろうか。

でも、少なくとも亮也は璃雨とは違う。

だって、生きる意志が亮也には在るから。
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