契約の恋愛
だから、亮也は救われる立場なんだと分かっている。
「でも、ここ数日学校にその友達が来なくなった。璃雨はその友達の事を理解していると思っていたから、大して気にはしなかった。けど、今日その友達の家に行ってたら、空っぽになったような変わり果てたその友達が全身傷だらけで歩いてたの。…璃雨は、その友達が苦しさのあまり犯罪行為に手を出さないかずっと気にしてた。でも…何か死体みたいな黒ずんだ瞳をいざ前にすると、すごくその友達が…怖くなった。」

璃雨は話していく内に、自分の手が小刻みに震えている事に気付いた。

恐ろしいのか。

自問自答をしている自分と向き合う。

同じ境遇を持つ友達が、恐ろしいのか。

…怖くない。

怖くないけど…。

「人間が壊れていく姿を見るのは、嫌なの。」

全てを吐き出してから、璃雨は瞳を閉じた。

紀琉が今、どんな気持ちでいるのかは検討できないから、とにかく紀琉の言葉を待つ事にした。

しばらくして、紀琉の口が開く。

《…似てるようで、正反対なんですね。璃雨とその友達は。》

つぶやくように口から出た紀琉の言葉は、どこか宙をまって安定していないような感覚に陥る。
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