契約の恋愛
…何それ…。

感情が押し潰されそうになっていく。

覚悟とか、そんなのつけている暇も何もない。

けれど、最後の最後に頼ったのは契約上の恋人。

"あの人"じゃない。

そんなこと当たり前に分かっているのに、なんだか酷く億劫になった。

「…紀琉…。」

震えている声を、何とか元た戻して瞳を開ける。

《璃雨。亮也君と、陸飛君と雪葉ちゃん、そして元カレの優瑠。璃雨は知らないだろうけど、それぞれ何かを抱えた人達だよ。》

私は目を見開く。

「亮也の事、知ってるの?」
しばらくの沈黙が続く。

《…知ってます。だって言ったでしょう?璃雨の事なら何でも知ってるって。》
あぁ…。あの雨の日。

璃雨は唇を噛みしめた。

何で知っているの?とか、最早そんな事どうでも良かった。

ただただ、うとましくて。
ずっと考えないようにしていた感情が、どんどん溢れていくのが分かった。

「…そう…なんだ。」

私は、消えいるような小さな声を出す。

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