契約の恋愛
"たよれ"と言ったあの人の声が響く。

表情はどんなのだったかもわからない。

ただ、密かに未来を語った"あの人"を突然思い出して、酷く億劫になった。

もし…だったらとか、考えないようにしようと心に決めて生きてきた。

かなわない夢を描くなら、そこになかった物にしてしまえばいい…と。

でも、一度閉めきった扉は長い時間の中で溜まった思いを溢れんばかりに、閉じ込めていた。

だから、その扉が一度開いてしまえば閉じ込めるのは難しくなると分かっていた。
何年もの間、見ないフリをしていた感情は勢いを増して、更に苦しく…更に悲しく。
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