契約の恋愛
完全にベタだった。

雪葉の表情は瞬時に曇り、ケータイを荒々しく取り出す。

…翔かな。

本人もそう思っていたのだろう。

文句を言う気マンマンの顔で、ケータイを開いた。

…その瞬間。

風が一段と強く吹いた気がした。

そして、一瞬で変わった雪葉の驚いた表情に、璃雨は不信感を抱く。

何だか…ひどく胸騒ぎがした。

亮也の時とはまた違った、恐るべき速度の胸騒ぎが。
雪葉は、神妙な面持ちでケータイの画面を睨むように見つめている。

「…翔から?」

何となくそう聞いてみると、雪葉の手元が一瞬震えたのを璃雨は見逃さなかった。

怯えたような表情が、目立っている。

雪葉は、すぐにケータイを閉じてあははと笑った。

「うんっ、翔からだった。今日バイトないんだって。」
窮地に立たされたような笑顔に違和感を覚える。

貼りついたテンションが、逆に何かを隠そうとしているのを目立たたせていた。
「……珍しいね。今日休みとか。」

「うんっ。そうだね。まぁ、せっかくの休みだしぶらぶらでもしてこっかな。」

うーんとわざとらしく伸びをする雪葉。

……?

璃雨は、雪葉の一挙一動を見ながらさっきのケータイの相手は本当に翔だったのだろうかと疑う。

あの、雪葉の変わりっぷりは明らかにおかしかった。
雪葉は嘘が下手だから。
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