契約の恋愛
無理やり俺に結論を言わせたかったのだろう。

その言葉を聞いた恵流が、照れた満面の笑みを浮かべた。

…やっぱり、本物のバカはこいつだ。

改めて分かった。

「やっぱりそーかなぁ。でも旦那持ちだぞ。無理だろー。」

……。

俺は冷めた瞳で、恵流を見下ろした。

「…無理に決まってんだろ。子連れなんだろ、その人。」
その言葉に恵流の表情が変わる。

…こいつ、まさか本気で旦那持ちの女に惚れたのか?
そんな疑いを持つ程、恵流の表情はどこかに本気を帯びていた。

「はぁ。そうなんだよなー。しかも旦那も格好いいし、妻も美人だし。その間の子供もめちゃくちゃ可愛いよ。女の子なんだけど。」

「……女の子。」

「そ。絶対将来美人になるだろうなー。今でもうなる程可愛いもん。」

その女の子を思い浮かべているのか。

恵流の表情が柔らかくなっていった。

恵流は子供が好きだから。
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