契約の恋愛
それとも、美人の子供だからなのか。

恵流があんまりその女の子をほめちぎるので、俺は興味本位でこう訪ねた。

将来、死ぬほど人を愛すことの意味を教えてくれることになるであろう、その子の名前を。

恵流は優しい笑みで微笑んだ。

初めて出会った時と同じ表情で。

「……璃雨ちゃん、って言うんだよ。」

……り、う…。

「瑠璃色の璃にー、雨のう。で、璃雨。名前の通りみずみずしい子だよ。」

俺は顔も知らない、まだ小さな君をこの時ずっと描いていた。

雨の中なら生きていけると言って、雨に打たれる君を見ることになるなんて、この時の俺はまだ予想すらしていなかったから。

俺は、何となく思ったことをいつの間にか口に出していた。

「…雨の、似合う子?」

俺の頭上に、見えない雨がずっと降りしきっていた。
寒かった。

冷たかった。

痛かった。

それでもいいと思えたのは、雨に濡れる君がとても俺のようには見えなかったから。

雨に濡れることに、何の悲しみを持っていない君に出会えたから。

俺のバカな質問に、恵流は表情を崩さずに笑った。

「おー。雨が似合う子だよ。紀琉も会ってみ?ビックリするから。」

………璃雨。

俺が死ぬほど愛した人。

中二の始まり。

俺は君を知った。

そして……恵流。

恵流は、その後…独りぼっちになった璃雨を拾う、彼女の言う"あの人"
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