契約の恋愛
璃雨の髪は背中の真ん中の少し下らへんの長さだ。

もう何年も長さは変えていない。

色を変えたのは、高２の初め頃に変えた。

長い故に、乾かすのにも一苦労だ。けれど切りたいとも思わず、ずっと伸ばし続けている。

それは、多分"あの人"の影響だろう。

"あの人"が、私の長い髪をとても綺麗だと、好きだと言ってくれたから。

だから、あの日からもう何年も立つのに未だに伸ばし続けている。

"あの人"と私の繋がりは、こんなつまらないものにしか、存在しない。

もう、ずっと。

髪を乾かし終わって、部屋から出るともう、黒澤さんはシャワーから上がっていた。

ソファーに座り、また街を眺めている。

漆黒の髪からしたたり落ちる水滴が、妙に色っぽい。
｢……黒澤さん。｣

私はこの時、初めて彼の名前を読んだ。

名字だけど。

親近感はまるで湧いてこなかったけど、得体の知らない男と部屋を一緒にしているという生々しさを少しでも和らげることができたら…いいかな。

｢あぁ…、璃雨さん。ちょうどいい所に。ちょっとこっちきてください。｣

ひらひらと手招きする黒澤さん。
黒澤さんの格好は、黒のシャツに黒のズボンと、またまた黒ずくめ。

私は何だ何だと駆け寄った。
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