契約の恋愛
私が出した答えをまるで分かっていたかのような、そんな表情をした黒澤さんは、いきなり細い腕を伸ばし、私の元に手を差し出した。

「…では、これからよろしくお願いします。」

私は一瞬手を握るか迷ったが、渋々手を握った。

これが、"契約成立"の合図というわけかな。

この手を離した瞬間、私達は"契約"上の恋人同士。

お互いの為に生きて、時間を共にしていく。

私はあなたのもので、あなたは私のもの。

ひとつの偽りの愛が、生まれた。

「…よろしくお願いします。」

月がそんな二人をずっと見ていた。
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