契約の恋愛
「あっ、もうそろそろ行くねっ。」

結局雑談を交わしてしまった私は、ギリギリの時刻に走らされるはめとなった。
腕時計を眺めながら、さっきからだんまりの亮也の肩に手を置く。

「ということで、アイスはまた今度ね。」

「ん?…おごらすのかよ、結局。」

「当たり前。まぁ、早く亮也も素敵な彼女つくりなよ。」

私がいなくなってしまう前に。

亮也はぎこちなくうなづいた。

私は、3人にバイバイと手を振り教室を飛び出していった。

教室を出る際に雪葉から、
「ストーカーの元彼には気を付けなよ!!」

と言われた。

璃雨は走りながら、頭を抱える。

元彼かぁ…。会ったら面倒くさいことが起こりそう。
…気を付けよ。

一方、璃雨が走り去った後の教室。

雪葉と陸飛と亮也は肩を並べて教室からすぐに出た。
お互いやるべきことがあるのだ。

陸飛はまだ興奮がおさまらない様子でなんだかそわそわしていた。

「いや~、まさか璃雨が彼氏をかぁ。信じらんね。雪葉ちゃんいつ聞いた?」

馴れ馴れしい陸飛の態度に雪葉はぎこちない表情を浮かべる。

璃雨と一緒にこの二人とはよく一緒にいたけど、璃雨なしでのこの組み合わせはお互い初めてだった。

陸飛はそんなことカケラも意識していない様子で、そんなお気楽な様子が雪葉の緊張をほぐす。

「聞いたのは今日だよ。」

打ち明けられた時の璃雨の表情を思い出す。

「えっ!?今日っ!?」

「うん。できたてみたい。あの子どっか人に大切なこと言わないから。」

そう口にする雪葉の表情が曇る。

そう、あの子はいつも自分のことは話さない。

陸飛はうーんとうなって、苦笑いを浮かべる。

バックにつけている鈴の凛とした音が、静かな廊下に響く。

「あいつは、昔から家庭環境も良くなかったらしいし…どっか冷めてるとこあるよな。」

いつも鈍感に思われる陸飛だが、璃雨のことはよく見ていた。
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