契約の恋愛
真っ黒の傘を指して。

私は幽霊でも見たような気分になり、その男から目が話せない。
男は、真っ黒いシャツに真っ黒のジーンズ、真っ黒い靴と、黒で統一していた。
まるで、コウモリ。

傘のおかげで、かろうじて顔は見えない。
けれど、こちらを見ているのは分かった。

立ち止まったままだし。

奇妙にな雰囲気に呑まれていく。
 …本当に幽霊?
そう疑った瞬間だった。

「幽霊ではありませんよ。」
男が口を開いた。
しかも、璃雨の気持ちを言い当てるかのように。

声は聞き惚れる程、色っぽい声で嫌いではなかった。
傘が不意に上を向き、男ねの顔が明らかになった。

璃雨は、その男が放つ奇妙で絶対的な存在感に、完全に酔いしれていた。

白い肌に、スッと通った高い鼻筋、鋭い瞳は青っぽかった。長めのストレートの猫っ毛の髪も真っ黒でよく似合っている。

美青年。そんなとこか。
外見は確かにきれいだが、多分璃雨よりかは年齢は上だ。

冷静に分析していると、不意に男がコツコツと近づいてきた。
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