契約の恋愛
只今、K大が目の前に見えてきた辺りにいる私は、意を決して門を通った。

門を通り、辺りを見回す。
…人、人、人…。

さすが大人気大学。

はぁ…。紀琉も説明不足だよ。
大学に来たのはいいけど、紀琉が何科に所属しているのかも聞いてないし、どこにいるのかも分からない。
聞かなかった璃雨も悪いけど、それくらい言ってくれても…。

もう講義終わってるかな…。
終わってるとしたら、やっぱ大学内の食堂とかにいたりするのかな…。

元彼とは、そこで待ち合わせてた記憶がある。

こんな下らない記憶、早く消してしまいたいけれど。
まぁ、行ってみようかな。
そう思い、歩き出す。

大学の生徒らしい人達は、制服姿の私を不思議そうに見ていた。

改めて見ると、でかい大学。
…そういえば。

私は静かに目を細める。

"あの人"も…K大出身だって言ってたな…。

穏やかな笑みで私を包む、今は亡き人。

食堂に行くまでの間、何人かの男に声をかけられた。
最初の方はにこやかにお断りしていたが、声をかけられたら前に進めない。

だんだんうっとうしい気持ちが態度に出てきてしまう。
…いちいち声かけてくんなよ。アヒルみたいな口しやがって。

と、思わず口にしそうになるほど、私の機嫌は危険信号が鳴っていた。

元彼の事も気にしつつ、紀琉の事も気にしなくてはいけない。

本当に疲れる。
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