契約の恋愛
璃雨は微かに微笑む。

「…遅い。」

それを聞いた紀琉は、微かに俯き困った顔を浮かべた。

「…それはこっちのセリフです。幾ら待っても来ないんで、探してたんですよ。」
よく見ると、確かに紀琉の息は少し上がっていた。

…お互い、探しあってたってわけね。

以心伝心というか、なんていうか…。

璃雨は、壁の所で紀琉におもいっきり殴られてうずくまる優瑠を冷たく見下ろした。

「…バイバイ。」

その一言だけかけて、私は強引に紀琉を引っ張っていった。

大学の道はあまり知らないくせに、もくもくと進んでいたせいか、私は見知らぬ場所にいつのまにかたどり着いていた。

薄暗い、廊下。

まるで秘密基地みたい。
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