契約の恋愛
本当に優しい手つきで、ぞわ~と全身に鳥肌が立っていくのを感じた。

璃雨だめなんだよね。
こうやって優しく触れられると。

表情に出ないように気を引き締める。

「…すいません。」

そう呟く紀琉の表情は、紀琉の長い前髪で隠されていた。

え、と呟く。

「だって今日私がここに来いなんて言わなかったら、こんな跡、つけられずにすんだのに。」

そう言って、手首をなでる。
「…別に紀琉のせいじゃないし。璃雨が言わなかったのが悪いの。」

紀琉は優しすぎるよ。

と後から付け足した。

紀琉は静かに微笑み、ゆっくり璃雨の肩に頭を乗せた。
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