ずっと抱いてて
最終章
     FIN
 二〇一〇年の七月中頃、空はすっきりと晴れ渡っていた。


 三月末に大学を中退したボクは、夜勤のバイトを続けながら、今まで通り町に住んでいる。


 思い立っていたボクはあのビンを持って、自転車で海へと向かった。


 ビンの中にはサラサラとしたパウダー状の骨が入っている。


 ボクが唯一持っている愛海の分身だ。
 

 自転車を飛ばすと、南風が吹き付けてきて、ボクは夏らしさを感じていた。


 ボクはビーチに辿り着くと、ビンをジーンズのポケットに押し込んで、ゆっくりと海岸沿いを歩いていく。


 辺りは海水浴客がたくさんいて、賑わっているからか、ボク自身ビーチの中でも静かな場所へと向かう。


 誰もいないことを見計らってビンを取り出し、中から粉になってしまっていた愛海の遺骨を取り出す。


 掌に載せて、風が一番強くなってきた頃を察し、ゆっくりと撒き出した。

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