ずっと抱いてて
 スゥー。
 

 風に乗って、遺骨が海辺一体に撒かれた。


 骨が撒かれていくのと同時に、ボクは愛海と過ごした日々を脳裏に思い返す。


 思わず涙が零れ出てきたが、それもすぐに笑顔へと変わった。


 不意に目の前に下半身のない彼女の霊が現れる。


 散骨されて初めて出てきた愛海のそれだった。


 ボクが彼女の顔を見て、語りかける。


 互いに目が合った。


「愛海」


「祐太」


「君、もう死んでるんじゃ?」


「うん。今、ほんのひと時だけど、地上に里帰りしたの」


「また戻るんだろ?」
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