ずっと抱いてて
「ええ。……試しにあたしに触ってみて」


 ボクが恐る恐る霊の体に触れてみると、スゥーとすり抜けてしまう。


 やはり目の前にいるのは紛れもなく愛海の霊なのだ。
 

 ボクはとてもいいものを見たと思い、思わず笑顔になる。


 彼女の霊は笑顔を残したまま、足元からゆっくりと消えていく。


 その後ろ姿を眺めながら、ボクが一言、


「最後までありがとう」


 と漏らした。


 それが愛海の霊を天へと再び帰す、一番の言葉なのだった。


 そしてボクはしばらくの間、空を見つめていた。


 梅雨明けで連日青空が広がっている。


 ボクはゆっくりと自転車を停めていた駐輪場へと向かった。


 自転車に飛び乗って、自宅アパートへと戻っていく。
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