ずっと抱いてて
 これが愛海との今生(こんじょう)の別れだった。


 何も思い残すことはない。


 あのビンも海の彼方へと放り投げていたのだ。


 綺麗な放物線を描いてビンが飛んでいき、ボクはそれを見つめながら、


“今頃、愛海は空のどの辺りにいるのかな?”


 と思っていた。


 そしてボク自身、気持ちが晴れたのだ。


「大学時代の彼女との美しい思い出は決して消えはしない」と。


 これは余談になるのだが、ボクが公募していた新人賞で、三百枚の長編小説<愛し、愛され>が選考委員たちから高い評価を受け、激賞されて、見事大賞を射止めていた。
 

 それはボクが大学の事務局に退学届を出してから、丸々二ヶ月が過ぎた頃だった。


 ボクはそれ相応に認められて、本職の作家となり、仕事の依頼が着始める。


 やはり二十一歳という若さも、ボク自身の実力以上に評価対象となったらしい。

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