盲目の天使

「だから、俺はカナンを滅ぼしたりはしない。攻め入ったのは、王の命令で仕方のないことだった。

だが、もしも、王が・・・」


そこまで言って、カルレインは言葉をさえぎった。


「いや、なんでもない。とにかく俺を信じていろ。お前のことも、カナン国のことも、決して悪いようにはしない」


カルレインの力強い言葉に、リリティスは、小さく頷いた。


「まだ、涙は止まらないか?」


「いいえ、カルレイン様のおかげで、もうすっかりとまりました」


顔を上げて、微笑むリリティスを見て、カルレインの鼓動は倍の速度で刻み始めた。


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