盲目の天使

「リリティス様。こちらは、カルレイン様の弟君で、アルシオン様でございます」


リリティスは、はっとして杖を置き、ひざまずいた。

ノルバスでは、位の高い者の前では、位の低い者が膝を折るのが挨拶だということは、
こちらに着いて一番に覚えた慣わしだった。


「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。

リリティスでございます」


“カナン国の王女”とつけるべきか迷ったが、属国として支配される立場の者が王女と名乗るのはためらわれ、

結局リリティスは、名前だけを名乗った。


「あ、あの、膝などおらないでください。

私は、カルレイン兄上の腹違いの弟で、アルシオンと申します」



なんと、可憐な少女だろう。

カナン国の女性は、皆このようにかわいらしいのかな・・・。



アルシオンは、一目見てリリティスを気に入った。


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