盲目の天使
翼を広げれば、リリティスの身長くらいありそうな、大きな鷲が降りてきた。
ジルは、小屋の前に下りてきたが、こちらにやってこようとはしない。
「あんたらがいるんで警戒してるんだ」
悲鳴を上げないのは、目が見えないからだろう。
怖いもの知らず、いや、見えず、か。
「驚きました。ほとんど翼の音がしませんでしたわ」
リリティスは、少しの音も聞き漏らすまいと、耳に集中している。
それでも、一瞬風の気配を感じたかと思うと、ジルはすでに地上に降り立っていた。
「あんたらは、そこから動かないように」
オークリーはそう言うと、ジルを右肩に乗せて、小屋に戻ってきた。
「わっ、こっちに連れてこないで!リリティス様、もう行きましょうよぉ」
ルシルは、オークリーから、めいいっぱい距離をとって、がたがたと震えている。