盲目の天使
「「リリティス様!」」
オルメとルシルは、同時に叫ぶが、恐怖に体が震え、動くことが出来ない。
しかし、間一髪、オークリーがリリティスを支えたので、なんとか転倒は免れた。
オークリーは、すぐにジルを自分の肩に移すと、
「行け!ジル!」
と威圧感のある声で命令した。
声も出せない、か。
かたまって動かないリリティスを横目で見て、オークリーは、内心肩を落とした。
ジルを、いや、カルレインの心を受け止めきれる姫など、そうそう簡単に転がってはいまい。
孤高の鷲が、しょせん、そのへんの人間に、心を許し、許されるわけがないのだ。
わずかな期待を砕かれて、やはり、それが、過剰な期待だったのだろうと、自嘲する。
オークリーの言葉に、ジルは大きな翼を広げて、ビュンと一つ羽ばたくと、
あっという間に上空へと去っていった。
ジルの羽が数枚、小屋の周りを舞っている。
「オークリー!」
もう少しで、大事なリリティスに、怪我をさせるところだった。
オルメがオークリーを責めようと、大きな声を出したとき、
突然リリティスが、声を上げて笑い出した。