盲目の天使
肩から胸にかけては、すかし模様のついた布で二重に覆われているが、通常の服よりも、明らかに、布地が薄く、袖もなかった。
肌を露出しないようにするのが、身分の高いものの慣例であるこの国では、今のリリティスの服装など、論外だ。
「す、すぐに着替えます」
カルレインのひざから降りようとすると、たくましい腕に阻まれた。
「一人では、着替えられないのだろう?」
「だ、大丈夫です・・」
自信はないが、やるしかない。
初めて会った男性に、着替えを手伝ってもらうなど、とうていできそうもない。
リリティスは、なんとかカルレインの腕を振り切って立ち上がると、一歩一歩、
踏みしめるように歩き始めた。
確か、このあたりに、衣装棚の扉があるはず・・。
部屋の中だけなら、杖なしでも、なんとかなる。
見当をつけたリリティスの両腕が、空中をさまようと、軽い痛みとともに、壁に触れた。