盲目の天使

きれいに洗濯されてはいたが、ところどころにほころびを縫いつくろった跡があり、
色もはげていて、見るからに着古した様子のものだ。



カナン国の豊かさから考えると、とても王女の待遇ではないな。



カルレインは眉間に軽くシワを刻んで、リリティスを眺めた。


カナン国は、水が豊かで気候にも恵まれ、農業の盛んな国だ。

大国に囲まれる格好であるため、隣国との交流も盛んで、小さいながらも、交易の要所になっている。

ノルバス国がカナン国に攻め入ったのも、ノルバスにはない、地の利がほしかったからだった。

ノルバスは、山脈に囲まれ、肥沃な土地が少ない。

そのため、傭兵業を生業にするものが多く、軍事国家として、外へ外へと勢力を伸ばすしかなかった。

< 19 / 486 >

この作品をシェア

pagetop