盲目の天使
「カルレイン様」
・・小鳥のような声だな。
戸惑いを含んだリリティスの声が、自分の名前を呼ぶ。
悪くない気分だ。
「なんだ?」
リリティスの言わんとするところを、当然カルレインは理解しているが、とぼけてみせた。
カルレインの長い指が、肩紐にかかったまま、リリティスの細い肩をするりと撫でると、
「カ、カルレイン様!」
リリティスが、顔を真っ赤に染め上げて、悲鳴のような声をあげた。
肘のほうに落とされた肩紐を必死に肩にかけようとする。
俺を咎めているつもりなのだろうが・・・そんなに愛らしい仕草では、少しも怖くないな。
カルレインは、くすりと笑って、首をすくめているリリティスの耳元に顔を寄せた。