盲目の天使

リリティスの唇は、カルレインのそれへは届かず、

その少しわきにそっと触れて、そのまますぐに離れた。


一瞬のことで、カルレインは、何が起こったかわからなかった。


ただ、唇の横に、感じた柔らかい感触と、自分の体よりもわずかに高い熱が、全身を駆け巡る。

毒のように、体中をおかして。


「リリティス・・」


カルレインに名前を呼ばれて、リリティスは、自分の取った行動にはっとした。


「すみません、私・・・」


急いで、体を遠ざけようとするリリティスを、

カルレインは、力を込めて、腕の中にとどめた。


「なるほど。俺は誘惑されているのだな」


カルレインのからかうような口調に、リリティスは、一瞬で真っ赤になる。


「ち、違います!」


< 244 / 486 >

この作品をシェア

pagetop