盲目の天使
からりと晴れ渡った空を見て、カルレインは、大きく息を吸う。
肺いっぱいに、澄んだ空気を吸い込むと、汚れた考えまで洗い流してくれそうだ。
「すまない。俺は、いつもお前を悲しませているな。
今日の宴には、アルシオンからもらった髪飾りと、
俺が買う、首飾りを身に着けるということでどうだ?」
「アルシオン様から贈られた髪飾りは・・・お返しします。
もともと、いただいたのが、間違っておりましたから」
さっさと返しておけばよかったのだ。
返すべきだと思ったことは、何度となくあったのに。
きっかけもなく、侍女に頼むのも気がひけて、今日まで延び延びになってしまったのだが。
優柔不断な自分の態度が、カルレインだけでなく、結局はアルシオンをも傷つけてしまうことになるだろう。
だが、カルレインは、穏やかに笑った。
「いや、俺が悪かった。
俺が、アルシオンに嫉妬しているからといって、
お前にあたるのも、物に当たるのも間違いだ。
もう、喧嘩はよそう。さぁ、これがいいかな」
カルレインは、水色や桃色、白色など、薄い色の石が、
花びらのように散りばめられた美しい首飾りを選ぶと、
リリティスの首に飾った。
カルレインの指が、リリティスのうなじに羽のように触れると、彼女の胸が躍る。
「あの・・・ありがとうございます」
小躍りする心臓を、必死で押さえつけて、リリティスは、微笑んだ。
二人が去っていくのを、露天商の店主である男が、鋭い目つきで睨んでいたことに、
カルレインは、少しも気づかなかった。
普段なら、その男が放つ殺気めいたものに、敏感に反応していたに違いない。
それは、先日、城の中庭で二人を窺っていた黒い影と、同じ気配をしていた。
崩壊への、のろしが、うちあげられたことに、
幸せな二人が、気づくことはなかった--。