盲目の天使
「わっはっはっは!」
突然笑い出した王に、どうすればよいか誰もわからず、皆、石のように固まった。
「面白い冗談だな。カルレイン。
今宵が無礼講でなければ、お前の首を飛ばすところだぞ!」
王は、いかにもおかしくて堪らないと言う風に笑ったので、
それにつられて、皆笑い出した。
カルレイン様もお人が悪い、でも確かに面白い冗談でした、
などと、口々に言い始める。
「カルレイン様っ!」
なおも言い募ろうとするカルレインの衣の裾を、リリティスは、かたく握り締めた。
カルレインが、冗談でそんなことを言ったのでないことを、
当然、リリティスは、わかっている。
だがやはり、そう簡単に、乗り越えていける問題でもないのだ。
自分のために、カルレインの立場を悪くしたくない。
今にも泣き出しそうな顔で、うつむくリリティスの姿を見て、
カルレインは、これ以上議論することをやめた。
皆が分かるまで、何度でも言えばよいだけだ。
カルレインは、注がれたお酒を飲み干すと、リリティスの手を、ぎゅっと握り締めた。