盲目の天使
カルレインめ、恥をかかせおって!
プロンは、カルレインの言葉に、はらわたが煮えくり返るような思いだった。
カルレインが冗談を言う性格などでないことは、自分が一番良く分かっている。
しかし、自分が恥をかかされることを嫌ったプロンは、
この場を、冗談ということでいったんおさめようと、機転を利かせたのだった。
リリティスを、一人の女として娶るということになれば、
カナン国を属国としてあつかうことにも、異論が出かねない。
カナンに残った残党たちにも、下手な権利を与えてしまうではないか。
プロンは、歯噛みしながら、酒をあおった。
その隣で、ソレイユは、真っ赤な口紅をのせた唇で、くすりと笑った。
カルレイン自ら、王の機嫌を損ねてくれるとは。
自分もまだ、つきに見放されているわけでもなさそうだ。
そう考えて、ソレイユは、自嘲した。
“つき”などというものに、頼るなど、ついぞなかったはずなのに。
欲しいものは、自分自身の力で手に入れるべきだ。
どこまでも、貪欲に。知力、財力、女。あらゆるものを、使って。
彼女は、今まで、そうやって生きてきたし、
そうしないのは、そうできない者の、たんなるいいわけにしか過ぎないと思っていた。
自分の欲望に正直で、何が悪い?
ソレイユは、そっとプロンに耳打ちした。